研究課題
基盤研究(C)
ヒト小腸様細胞株C2BBe1細胞株はCaco-2細胞株に比べ、β-カロテン中央開裂酵素(BCMO1)や細胞性レチノール結合タンパク質タイプII(CRBPII)の遺伝子発現量が高く、その他のビタミンA吸収・代謝系の遺伝子も発現しており、ヒトのビタミンA吸収・代謝研究において有用な小腸様モデル細胞株である。ヒトCRBPII遺伝子およびBCMO1遺伝子の発現調節に関する解析の結果、ヒトCRBPII遺伝子では、核内受容体HNF-4αが小腸特異的発現転写因子CDX-2やGATA6と協調的に相互作用し、転写を促進することが明らかとなった。一方、ヒトBCMO1遺伝子については、HNF-4αとHNF-1がTATAボックス近傍の同じ領域に競合的に作用し、BCMO1遺伝子の発現量を調節させる可能性が示された。また、これらの転写調節因子はヒト小腸吸収細胞の分化・成熟過程のビタミンA/β-カロテン吸収・代謝機能亢進においても重要な転写調節因子であることが考えられた。HNF-4は、様々なリン酸化・脱リン酸化や脂肪酸リガンドによりその転写因子としての機能が調節されている。PKC活性化剤であるホルボール・12・ミリステート・13・アセテート(PMA)で処理をしたC2BBe1細胞では、HNF-4α発現量の低下に伴い、BCMO1およびCRBPIImRNA量も顕著に低下した。また、HNF-4のリガンド活性を持つと考えられる脂肪酸リガンド(パルミチン酸、リノール酸)でC2BBe1細胞を処理した結果、CRBPIImRNA量は、パルミチン酸処理により増大し、リノール酸処理により減少したことから、HNF-4によるヒトCRBPII遺伝子の発現は、細胞内の脂肪酸の種類により異なる変動を受けるものと推察された。以上の結果から、HNF-4αまたはHNF-1は、ヒト小腸吸収細胞のビタミンAやβ-カロテンの吸収・代謝調節に重要な転写因子であることが明らかとなった。特に食事からのビタミンAの吸収能とβ-カロテンからビタミンAへの転換能の相反する変動がこれらの転写因子により遺伝子レベルで制御されていることはビタミンAの生体内利用効率および恒常性維持を考える上で重要な知見であると考えられる。
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