研究概要 |
本研究は,骨格筋再生過程を生体内でリアルタイムに観察するイメージングシステムの開発を目的とした.研究は主に,(1)マウスを用いて実験的に惹起した筋再生過程で細胞の動態を観察する系の構築(2)蛍光タンパク標識をした分子を使ってゼブラフィッシュにおける筋形成過程で細胞の動態を観察する系の構築(3)筋形成にかかわる特定の細胞集団を標識するモノクローナル抗体の作製,という3つのアプローチを採った. (1)シュワン細胞でβガラクトシダーゼを発現するトランスジェニックマウスを用いて生体内の筋肉表層に局在するシュワン細胞をβガラクトシダーゼの蛍光基質により可視化して観察撮影出来ることがわかった.この顕微鏡システムをもとに骨格筋再生過程を連続観察するシステムを構築するために条件検討を行った.観察対象とするマウスの筋肉として胸鎖乳突筋,精巣挙筋,薄筋,広背筋,小趾外転筋について検討を行った.また,βガラクトシダーゼの蛍光基質の検討と,視野の複数種類の細胞種を見分ける為の標識方法の検討,筋障害方法(カルジオトキシンの濃度,投与方法)の検討などを行った.その結果,胸鎖乳突筋と小趾外転筋で短時間,骨格筋再生部位の動態を観察できる可能性があることがわかった.(2)ゼブラフィッシュの受精卵に筋細胞特異的に蛍光タンパクを発現するプラスミドを導入し,発生過程での筋系列の細胞の動態を共焦点レーザー顕微鏡と蛍光実体顕微鏡でタイムラプス撮影する系を構築した. (3)筋再生時の筋前駆細胞に特異的に反応するモノクローナル抗体を取得した. 今後はこれらの成果をもとに骨格筋再生部位の観察システムの確立をめざす予定である.
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