研究概要 |
ニーマンピックC1蛋白質(NPC1)のプロテアゾーム分解の生化学的機序を解析した。 まず、プロテアゾーム阻害薬MG132に対する種々の変異NPC1の反応性を検討し、野生型と同じ反応を示すことを確認した。このことは、NPC1のユビキチン化とそれに引き続くプロテアゾーム分解は、NPC1の生理機能とは関係なく、その蛋白質の合成過程で生じることを意味する。 次に、NPC1の合成過程に関与する分子シャペロンの同定を試みた。COS細胞発現系において、Flag-NPC1はheat shock protein 70 (HSP70), HSP90およびcalnexinと共免沈され、これらのシャペロンがNPC1の合成過程に関与するものと考えられた。 さらに、NPC1をユビキチン化するE3リガーゼの同定を試みた。COS細胞発現系においてFlag-NPC1とCHIP (C-terminus of HSP70-interacting protein)を共発現するとMG132に対する反応性が亢進し、CHIPを阻害するBAG-2の発現により反応性が低下した。これらの結果から、NPC1をユビキチン化する主要なE3リガーゼはCHIPであると結論した。 最後に、ユビキチン化修飾を受けるNPC1のリジン残基の同定を試みた。MALDI-TOF/MASS解析により、NPC1のサイトゾル側に位置する12個のリジン残基のうちK318,K792,K1180の3つがユビキチンのアクセプターになることが予想された。各々のリジン残基を置換した変異体を作製してその発現実験を行ったところ、ワイルドタイプの数倍の発現量を示すことがわかった。 以上の結果により、NPC1のプロテアゾーム分解の詳細な生化学的機序が明らかになった。
|