研究課題
基盤研究(C)
1.【ミトコンドリアゲノム多型および変異の網羅的解析】ヒトのミトコンドリアゲノム(ミトコンドリアDNA, 以下mtDNA)の加齢に伴う影響を検討した。mtDNAは、核DNAに比較して多様性が高く、多くの遺伝子多型が存在し、また、糖尿病や難聴などの症状を呈するミトコンドリア病の原因遺伝子変異が、数多く報告されている。mtDNAの加齢に伴う影響を検討する際には、これらの遺伝子多型および病因遺伝子変異を的確に同定する必要がある。遺伝子多型を明らかにするためには、数千人を対象とした大規模関連解析を行うことが必要であり、mtDNA多型を網羅的かつ迅速に分析するシステムの開発が必須であった。また、mtDNA病因変異は、ミトコンドリア病のみならず、糖尿病などの生活習慣病の原因になり、さらにその変異率の量的変化は、加齢による影響を直接的・間接的に受ける。したがって、蛍光ビーズを利用して主要な42種類のmtDNA病因変異を迅速に分析する解析システムを開発した。2.【健康長寿に関連するmtDNA遺伝的背景の解明】 東京都老人総合研究所・自立促進と介護予防研究チーム「お達者健診」における、約500人の健常高齢男女、また、社会参加とヘルスプロモーション研究チームの65歳以上の住民を対象とした介護予防健診「草津町にっこり健診」650人から、それぞれ適正なインフォームド・コンセントの手続きを経て収集した血液試料ならびに関連情報を解析し、糖尿病・メタボリック症候群・脳梗塞・心筋梗塞・慢性腎臓病などの生活習慣病と、それらに関連するmtDNAおよび核DNA多型を分析した。(一部解析終了)3.【mtDNAの加齢の影響の検討】 加齢に伴うmtDNAの量的変化の迅速解析法を開発することを目的とした。一方、mtDNA多型や病因変異は一般的に母系遺伝し、遺伝的体質や寿命との関係が明らかになっている。したがって双方を解析する事で、個人の遺伝的体質のみならず加齢に伴うmtDNAを網羅的に評価する事が可能である。収集した唾液から抽出したmtDNAにおける加齢の影響は明らかではなかったが、骨格筋などでは研究代表者らが開発したmtDNA定量法は、mtDNAの核DNAとの相対比率を評価することにより、mtDNAの増減を明らかにできる。
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