研究概要 |
濾胞性リンパ腫にみられるbcl-2遺伝子再構成について,再構成遺伝子を組織切片上で増幅すること(in situ PCR)で,再構成遺伝子保有細胞の組織内分布を光顕レベルで観察することが可能となる.この方法を確立するため,昨年度は染色体分析にてt(14;18)が確認された症例について,症例を匿名化した後,loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法のためのプライマーをマニュアルで設定し液相LAMPにて増幅を試みたが,満足すべき結果は得られなかった.このことからbcl-2遺伝子再構成の際の切断点が塩基配列レベルでは必ずしも一定していない可能性を検討すべきことに気付いた.そこで今年度は,bcl-2遺伝子再構成に関して方法が確立されている通常の液相PCRを実施し,増幅産物の塩基配列をもとにプライマーを設定する方法を試みた.しかし,各症例共通あるいは症例ごとにプライマーを設定しても,LAMP法による満足な増幅は得られず,研究期間中に所期の目的には到達しえなかった.LAMP法による.in situ PCRは,Maruyamaらが細菌を貼付したガラス切片で2003年に成功しているが,5年を経た現在でも良好な結果が得られたとする報告は,lkedaらの肺癌組織での点突然変異を検出したとする報告以外には見当たらない.従って,今回のように染色体転座を組織切片上で検出する試みには,何か別の大きな障壁があるものと推測され,異なる角度からの検討が必要と考えられる.なお,試行錯誤の過程で濾胞性リンパ腫を含む若干の知見と考案が得られ,それらも加味した研究発表を付加的に行った.
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