研究概要 |
平成18年度から19年度の2年間にわたる本研究では,膵臓の膵管上皮病変,特にPanINとIPMNについて,その病理形態,粘液形質,分子生物学的検索を行った.平成18年度はPanINに関して,PanIN-1はきわめて頻度の高い病変で,ついでPanIN-2の頻度が高く,PanIN-3は極めて稀な病変であることがわかった.特にPanIN-3は剖検例では遭遇する可能性が極めて少ない病変と考えられた.PanIN-1やPanIN-2がgastric type IPMNの周囲でみられることがあり,IPMNの初期病変を考える上で興味深い所見と考えられた.また,PanINの段階が上昇するに従い,p16やDPC4などの遺伝子異常との相関が高くなる傾向がみられた.Cancerization of the ductに関しては少なくとも2種類の病変が存在することが確認された. 平成19年度はIPMNを中心に検討した.Gastric type,intestinal type,pancreatobiliary type,oncocytic typeの4つの亜型のうち,pancreatobiliary typeの頻度はきわめて低いが,gastric typeのhigh grade lesionである可能性が示唆された.IPMNの初期病変としてはPanINの可能性が高いと考えられた.上記以外の亜型として,きわめて頻度は少ないものの,粘液産生が少ないtypeが存在することも判明した.このtypeはMAC5ACが陰性で,これまでintraductal tubular tumorとして報告されたものもこの中に含まれるが,それ以外に乳頭状を呈するものも存在すると思われる.細胞診においても,上記の4つのsubtypeはある程度推測可能であった.
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