研究概要 |
1.hWAPLの発現量を指標とした新規子宮頸癌診断法の開発 これまでの研究で、細胞診検体のRNAに対するhWAPL mRNAの定量に最適の定量的real time PCRの系が確立されつつあるが、未だに一部のサンプルに対しては定量性が低い増幅を示すことがあり、現在、さらに検討を進めている。一方、hWAPLは、HPVのE6、E7癌タンパク質によって発現誘導されるため、検体中でE/E7 mRNAを発現しているHPVのサブタイプを簡便に決定する新しいシステムを構築した(投稿中)。さらに、後述のようにhWAPLmRNAの5'-末端領域の塩基配列には極めて多彩なバリエーションがあることを発見したため(投稿中)、病期とhWAPL mRNAの5'-末端の塩基配列やその発現状況、及びHPVのサブタイプそれぞれの相関を検討したが、5'末端配列の多様さに比べ解析した症例が少ないため、現在、さらに多くの検体について検討を進めている。 2.子宮頸癌の新規分子標的療法の開発 hWAPL特異的siRNAを用いた分子治療を開発する場合、HPVを標的とする場合と違って多様なサブタイプを考慮しなくて良いが、その反面、hWAPLは成育に必須な遺伝子であると考えられるため、siRNAの投与法や適性量などの厳密な検討が必要となってくる。また、siRNAはoff targetの問題もあるため、siRNAの塩基配列の再検討も含め、現在精密な検討を進めている最中である。 3.hWAPLの生理的機能の解明 本研究において、hWAPLの過剰発現時に多核化及び核DNA損傷を伴った染色体不安定性が誘導されることを明らかにした(Ohbayashi, Oikawa, et. al., Biochem.Biophys.Res.Commun., 2007、356:699-704)。従ってhWAPLの適正な発現が正常な細胞周期制御に必須であると想定される。さらに、上述のようにhWAPLには多数のスプライシングバリアントが存在することを発見した(投稿中)。その発現状況が組織によって大きく異なることから、hWAPLを介した細胞内制御系は、極めて複雑精巧に行われている可能性が考えられる。さらにサンプル数を増やして検討することで、hWAPLの各バリアントの機能の違いの解明を目指す。
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