研究課題
基盤研究(C)
本研究は、熱帯熱マラリアの治療や予防に応用できるようなヒトモノクローナル抗体の作製をめざしており、熱帯熱マラリア原虫のメロゾイト表面に存在するmerozoite surface protein1のC末端側19kDa領域(MSP-1_<19>)を抗体の標的分子とした。これまでに得たクローンPf25について、L鎖とH鎖の相補性決定領域(CDR)をコードする遺伝子に変異を導入し、1アミノ酸を置換して親和性の改良を試みた。L鎖では、CDR3においてTyr^<92>あるいはI1e^<97>を置換した結果、Tyr^<92>がAlaに、Ile^<97>がGly、Leu、Glu、Ala、Serに置換されたクローンが得られた。一方、H鎖では、CDR3においてVal^<101>あるいはTrp^<107>の置換を行った。Val^<101>についてはVal以外の配列を示したものはなかったが、Trp^<107>に関してはArgとSerに置換されたクローンが得られた。MSP-1_<19>に対する親和性は、L鎖のIle^<97>をLeuに置換したクローンで1.2倍、H鎖のTrp^<107>をSerに置換したクローンで1.1倍に向上していた。組換え型のFab抗体は改変が容易であり、エピトープ構造の解析にも応用できると考えられた。また、MSP-1遺伝子は二型性の対立遺伝子により表現されるため、対立遺伝子内の組換えにより抗原多型性が生じるが、Pf25はFCR3株と異なる対立遺伝子を有する3D7株とも反応した。従って、エピトープは両株間で良く保存されている領域に存在し、Pf25は抗原性の異なる様々な株に反応できる可能性が高いと考えられた。さらに、Pf25によって認識されるエピトープが熱帯熱マラリアに対して免疫のあるヒトの血清でも認識されているかどうかを明らかにするため、ソロモン諸島の住民の血清を用いて競合ELISA法によって検討した。その結果、30%の血清において有意な抑制が認められた。従って、Pf25によって認識されるエピトープ以外にも防御反応に関与するエピトープが存在すると考えられた。Pf25については、今後Fc部分を含む完全抗体分子に改変することで有用性が高まると考えられる。
すべて 2008 2007 2006
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (4件)
Parasitol.Res. 103
Parasitol. Res 103(in press)
Infect.Immun. 75
ページ: 3614-3620
Mol.Biochem.Parasitol. 153
ページ: 107-114
Parasitology 134
ページ: 1989-1999
Infect. Immun 75(7)
Mol. Biochem. Parasitol 153(2)
Parasitology 134(14)
Infection and Immunity 75
Molecular and Biochemical Parasitology 153
Molecular and Biochemical Parasitology (印刷中)
Clin.Vaccine Immunol. 13
ページ: 594-597
Clin. Vaccine Immunol 13(5)
Clinical and Vaccine Immunology 13・5