研究課題
基盤研究(C)
本研究では、腸炎ビブリオに新たに見出された2セットのIII型分泌装置(TTSS1とTTSS2)およびそれらの分泌蛋白(エフェクター)の発現条件とその発現制御機構について研究を行った。本研究により得られた研究成果は以下である。TTSS1、 TTSS2それぞれの装置遺伝子およびエフェクター遺伝子のさまざまなin vitro条件における発現を検討した。その結果、TTSS1は培養の早期(log期)から発現がみられるのに対し、TTSS2は比較的後期から定常期により強い発現がみられた。またTTSS1、 TTSS2ともに、腸炎ビブリオの増殖至適条件である塩濃度3%ではなく、1%以下の時により強い発現が見られた。また30℃以上の温度でともに発現が上昇した。これらの結果は、両TTSSの発現至適条件を示唆するものである。TTSS1、 TTSS2ともにゲノム上でそれらの遺伝子の近傍に、それぞれの発現制御をしていると考えられる遺伝子が見いだされた。その詳細について解析した結果、TTSS2に関しては、上流下流の関係にある2つの制御蛋白がTTSSを含むpathogenicity island(Vp-PAI)の領域全体の遺伝子を正に発現制御していることが明らかになった。また今回見いだされた制御遺伝子が制御する遺伝子を同定するためマイクロアレイを用いて解析を行ったところ、その発現制御はVp-PAI領域内の遺伝子群に特異的であることが示された。以上のように、本研究により腸炎ビブリオに新規に見出された2セットのIII型分泌装置およびそれらのエフェクターの発現条件と発現制御機構の概要を明らかにすることができた。この成果は腸炎ビブリオの病原性を理解する上で重要な知見であるとともに、病原因子であるTTSSの発現抑制による感染制御にもつながる結果である。
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