研究概要 |
PDLIM2(PDZ and LIM protein-2)は、転写因子STAT4に対するユビキチンリガーゼとして申請者によって単離された核内蛋白である。本申請研究においては、このPDLIM2がNF-kBのp65サブユニットに対してもユビキチンリガーゼとしてはたらいていることが明らかになった(Tanaka T, Nat Immunol, 8,584,2007)。PDLIM2はC末端部のLIMドメインを介してp65をユビキチン化するとともに、N末端部のPDZドメインを介してp65をnuclear bodyへ核内輸送する。ユビキチン化されたp65は最終的にnuclear bodyにおいてプロテアーソームによって分解されることにより不活性化される。さらに、PDLIM2欠損マウス由来の樹状細胞においては、LPS刺激による炎症性サイトカインの産生が、正常マウスにくらべて著明に増加していた。また、PDLIM2欠損マウス由来の樹状細胞においては、LPS刺激時のp65のユビキチン化が正常マウス由来細胞と比較して著明に低下しており、同時に核内のp65の蛋白量も増加していた。これらのことから、PDLIM2によるp65の核内輸送とユビキチン依存性分解というNF-kBシグナルの新たな不活性化経路の存在が明らかになった。さらに、PDLIM2がI型インターフェロンの産生に必須の転写因子であるIRF3およびIRF7の転写活性を抑制することも明らかになった。また、LIM蛋白ファミリーの中でPDLIM2と相同性が特に高いRil(PDLIM4), Elfin(PDLIM1), ALP(PDLIM3)は、PDLIM2と同様にNF-kBの転写活性を抑制することも明らかになった。 以上より、LIM蛋白ファミリーは、免疫反応を負に制御するシグナル伝達調節因子の新たなファミリーであることが示唆された。
|