研究課題
基盤研究(C)
甲状腺腫瘍の穿刺検体をいったん凍結して保存し、後日溶解して抗Ber-EP4抗体で上皮細胞をセレクションしてTFF3mRNAの定量をする方法(凍結細胞法)を試みたが、約10%の検体で、組織での発現量とセレクション後の検体の八間が大きく乖離することがわかった。その原因として甲状腺腫瘍においてBer-EP4抗原の発現が一定ではないことが推測された。そこで、穿刺検体から血球細胞を除き、甲状腺上皮細胞を選別するための新たな方法として以下を試みた。1個々々ばらばらの状態で存在する血球細胞とは異なり、甲状腺腫瘍細胞は通常は細胞塊として穿刺吸引される。そこでメッシュを使用したろ過を行うこととした。手順としては1. 甲状腺腫瘍を穿刺し、穿刺した針をRNA保存液(RNAlater)に入れて洗うことで腫瘍細胞を回収、保存する。2. 35μのメッシュがはられたキャップをつけたチューブに検体を移す。遠心をかけ塊となった腫瘍細胞のみメッシュ上に残るようにする。3. メッシュ付キャップを別のチューブに載せて細胞溶解液を加え遠心することで腫瘍細胞のRNAを回収する。患者の穿刺検体を使用してメッシュによるろ過の効果を甲状腺腫瘍特異的遺伝子であるサイログロブリンmRNAと白血球に発現するCD45mRNAのコピー数を指標として評価した。ろ過によって甲状腺腫瘍細胞はメッシュ上で平均約40倍に濃縮されていることが確認された。手術摘出された濾胞性腫瘍の組織検体を使用して、そこから穿刺検体を作成し、メッシュでろ過してTFF3mRNAのコピー数を計測して組織から抽出したRNAを使用しての結果と比較した。検討した8例全例で両者間の変動は20%以下に押さえられ、定量に使用したTaqMan PCR法の誤差を考慮に入れると非常に良好な結果であると考えられた。
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