研究概要 |
今回の検討では、苦味受容体に関連するとされている、TAS2R40,42,43,48,T2R3,8,9,10,13,16の10遺伝子を対象とした。 味覚受容体遺伝子の発現をみるためにRT-PCRを用い、葉状乳頭からの擦過標本にTRIzol(Invitrogen)が加えられ、total RNAの単離が行われた。逆転写反応にはSuperScript III(invitrogen)が用いられ、PCR反応系にはExTaq(Takara)が用いられた。PCR産物はBioanalyzer2100(Agilent)によって検討された。 健常者に比較して味覚低下例において味覚受容体遺伝子の発現頻度が低い傾向がみられ、TAS2R40は統計学的に有意に発現頻度が低下していた。味覚低下の原因別の検討では、特に亜鉛欠乏性味覚障害例での発現頻度が低い傾向がみられ、TAS2R40,T2R8,10は統計学的に有意に発現頻度が低下していた。特発性味覚障害例はTAS2R40、薬剤性味覚障害例はT2R3が統計学的に有意に発現頻度が低下していた。 また、苦味の味覚低下例は健常者に比較して、これらの味覚遺伝子の発現頻度が低い傾向がみられ、TAS2R40,42,T2R3,8,9は統計学的に有意にその発現頻度が低下していた。以上の結果からTAS2R40,42,T2R3,8,9,10,がヒトの味覚に関連している可能性が高いことが示唆され、味覚障害の診断や予後診断に応用できる可能性があるものと考えられた。特に亜鉛欠乏性味覚障害例において臨床応用が可能であると思われた。
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