研究概要 |
マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は活性Tリンパ球より分泌され遅延型アレルギー反応など細胞性免疫に関与する液性因子として発見され,その後様々な炎症性疾患でMIFの発現が増強し病態の増悪に関与することが解明されてきたタンパクである.炎症性腸疾患におけるMIFは発症や病状の進行において重要な役割を持ち,また治療のターゲットとして注目されている.本研究課題は,ヒトやM工Fノックアウトマウスにおける腸炎発症でのMIFの役割の解析およびMIFのin vitroでの機能を検討し,さらにTヘルパーエピトープMIF-DNAワクチンなど新規治療法を開発することを目的としていた. MIFノックアウトマウスにおいてデキストラン硫酸誘導大腸炎モデル(DSS腸炎モデル)が殆ど発症しない機序として熱ショックタンパクの誘導やケモカイン産生抑制を介することを解明した.さらに炎症性腸疾患のひとつであるヒト潰瘍性大腸炎患者の白血球除去療法のメカニズムにHIFが関与していることも解明した. 最近抗体医薬による難治性疾患の治療開発が旺盛であるが医療コストや継続性の部分で問題点も見うけられる.そこで本研究では,能動的抗体誘導を目的としたThエピトープMIFDNAワクチンによって,DSS腸炎モデルでの炎症抑制効果が組織学的,臨床所見,ケモカインおよび接着分子発現亢進の抑制により確認された(論文投稿中).一方,Colitic cancerにおけるMIFの役割についてAzoxymethaneとデキストラン硫酸投与による動物モデルで,MIFノックアウトマウスでは腫瘍産生が著明に抑制されていることも判明した.今後,さらなる腸管炎症や発癌機構におけるMIFの役割解明により治療応用開発はさらに進行していくことが期待される.
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