研究概要 |
1.慢性腸炎モデルにおけるRvE1の有効性の検討 IL-10欠損マウスはSpecific Pathogen Free下で腸炎を自然発症することが知られている。この腸炎の発症には腸内細菌の存在が不可欠であり、抑制性サイトカインであるIL-10欠損により腸内細菌に対する免疫寛容状態が破綻し、その結果Th1優位の腸炎を発症すると考えられている。そこで,RvE1を腸炎発症後に連日投与し、その臨床的変化(体重変化・便潜血)、腸炎評価システムによる組織学的変化、粘膜下ならびに腸管リンパ節における抗原提示細胞の活性化、T細胞のサイトカイン産生能を検討した。Th1型腸炎を誘導するために,IL-10欠損マウスの脾細胞からCD4陽性T細胞を調整し,リンパ球が存在しないRag1欠損マウスに移入2週間目より下痢・体重の減少,また4週後には組織学的に中等度から高度の腸炎を誘導する腸炎モデルを確立した.現在RvE1ならびにコントロールを投与する実験を行っており、予備実験では、RvE1は腸炎モデルを軽減することを明らかにしている。 2.抗原提示細胞におけるRvE1の刺激抑制効果の解明: 上記腸炎モデルを用いてRvE1受容体発現(ChemR23)ならびにその局在をモノクローナル抗体にて検討したところ、粘膜下の抗原提示細胞に発現が認められた。そこで、腸炎マウスの大腸粘膜下から樹状細胞を精製し、RvElがLPS刺激にて誘導される炎症性サイトカインの産生を抑制するかどうかを検討したところ、RvE1は容量依存的にLPS刺激によるIL-12p40ならびにTNF-alphaの産生を抑制した。 これらより、RvE1は樹状細胞に発現する特異的受容体ChemR23を介して、炎症性サイトカインやToll-like受容体を介した活性化を抑制し、腸炎を制御している可能性が示唆された。
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