研究概要 |
本研究では胸やけ、逆流感などの胃食道逆流症の定型症状発生のメカニズムを特に食道筋層の肥厚の関連から明らかにすること目的とした。さらに、臨床的,実験的に胸やけ発生メカニズムと、これを応用し胃食道逆流症の診断、治療への応用を検討した。 1)健康なボランティアおよびGERD患者を対象として食道酸注入試験によって誘発される胸やけ症状発現時にリアルタイム食道内超音波画像によって食道筋層の収縮を分析した。食道内酸注入試験では被検者は一定の割合でGERD患者全員では胸やけを自覚したが、いずれの群でも胸やけ発現時に平均の食道筋層厚の有意な増加はみられず、筋層の厚さの変化と症状発現との関連は証明できなかった。しかし、GERD患者ではベースラインの食道筋層の厚さが正常患者に比してGERD患者で有意に増加していたことを利用して、体外式腹部超音波検査法で食道下端の筋層厚をoperator blindの前向き臨床試験を行ってGERD患者と非GERD患者で比較した。その結果、GERD患者の食道筋層厚は非GERD患者と変わらなかったものの、特に逆流性食道炎患者では非GERD患者に比して食道筋層厚が有意に増大しており、今後GERD患者のスクリーニングに役立つ可能性がある。 2)また,胸やけメ力ニズム解明を目的とした動物実験も並行して行った。胃内に留置したバルーンを伸展させるという急性疼痛の中枢への伝達経路と伝達メディエーターを解明し、さらにラット自発運動量が胸やけという漠然とした内臓痛の指標として使用可能である可能性を自発運動量の定量化と食道粘膜タイト結合蛋白発現や食道粘膜細胞間隙の開大、さらには痛み物質Spやその受容体NK1の発現変化との関連から報告した。
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