研究概要 |
本研究の当初の目的である肝細胞特異的Pten欠損(Pten KO)マウスの肝臓でみられる炎症、線維化、発癌がオートファジーの異常に基づくことを明らかにすることはできなかったが、これまで詳細な解析が行なわれていなかったclass I PI3-kinaseによるオートファジー制御のメカニズムについて新たな知見を得ることができた。 Class I PI3-kinase/Aktシグナルが活性化されているPten KOマウスの肝臓では飢餓状態下でのautophagic vacuplesの形成障害や蛋白分解の低下がみられオートファジーが抑制されていた。しかし、野生型マウスとPten KOマウスの肝臓ではautophagosomeの形成に必須のAtg12-Atg5複口体やLC3-II蛋白の発現量に差はみられなかった,一方,電子顕微鏡による観察ではPten KO肝細胞では,autophagic vacuoles(autophagosome + autolysosome)の形成が障害されていた。percoll gradient centrifugation法によって分離したautolysosome fractionではβ-hexosaminidase活性やLGP85,LC3-II,p32の発現が抑制されており,autophagosomeの形成障害に加え,autophagosomeからautolysosomeへの成熟も障害されていることが明らかになった。以上より、Ptenの欠損に基づくClass I PI3-kinase/Aktシグナルの増強は、Atg複合体の形成を阻害することなく、autophagosomeの形成と成熟を障害しオートファジーを抑制することが示唆された。
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