研究概要 |
肝移植が適応となるような末期肝疾患患者は今後増加していくと推計されるが,唯一の根治療法である肝移植は未だ困難である.その代替治療として自己細胞由来の再生治療は大変魅力ある新規療法である.近年,骨髄由来幹細胞の可塑性が注目され,肝細胞についてはhematopoietic stem cell(HSC)やMAPCといろた細胞の分化能が明らかとなりその供給源として期待されている.しかし,これらの細胞には,得られる数が少なく実際的ではないこと,細胞融合の可能性が否定しきれないなどの問題点も指摘されている.申請者らはヒト骨髄間葉系幹細胞(MSC)を用いて肝細胞に分化させることに成功した(Sato Y,Takimoto R,et al.,Blood 2005).しかし,本MSCを用いてもヒト肝細胞への分化率は0.5%であった. そこで本研究では,ヒトMSCにhTERT遺伝子を導入して不死化したhTERT-hMSCを作成し,これをさらにBmi-1遺伝子導入による効率の良い培養増殖が可能となったヒトMsc-TERT-Bmi1クローンを樹立し,実現可能な肝再生医療の基礎的検討を行った。まず,前述したhTERT/Bmi-1-hMscを樹立し,得られたクローンで,in vitroにおける肝分化能を検討した.その結果,ヒトalbumin産生能やチトクロームP450関連酵素であるCYP3A4,CYP2C8およびCYP2C9の酵素活性の増加が確認された.さらに,グリコーゲン貯蔵能や,LDLのuptake活性も確認され,機能的な肝細胞様の細胞に分化していることが明らかとなった.本細胞を用いることで薬剤代謝薬剤感受性の研究,ウイルス感染モデルへの応用が可能にあるど期待される.
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