研究概要 |
CTLにより認識される抗原エピトープの同定およびCTL誘導可能な抗原ペプチドの同定: HCV-1b由来の構造および非構造タンパクより、in silico解析により、HLA-A24分子に結合する可能性のある9-ないし10-merペプチド44種を抽出し、これらをすべて合成した。次に、これら44種の中からHCV-1b感染患者の血中IgG抗体と反応性を示すもの6種のペプチドを選出し、それぞれのペプチドのCTL誘導能を検討した。その結果、3種のペプチドがHCV-1b感染患者の末梢血リンパ球よりをCTL誘導可能であることを示した(Hepatology Research, 2007)。また、同様の手法を用いて、HLA-A3スーパータイプ(HLA-A3,A11,A31,A33)分子に結合する可能性のある9-ないし10-merペプチド46種を抽出し、最終的に3種の新規ペプチドを同定し、CTL誘導能を確認した(Cancer Immunol.Immunother, 2007)。日本人におけるHLA-A2,A24,A3スーパータイプの頻度はそれぞれ40%、60%、および44%であり、すでに報告しているHLA-A2拘束性ペプチドと合わせると、日本人のほぼ100%に適応可能なワクチン候補ペプチドが同定された。 バイオマーカーとしての抗HCVペプチド抗体の可能性の検討:抗原エピトープとして同定したHCV由来ペプチドに対する血中IgG抗体量と患者の病態との関連性を解析した。その結果、Core 35-44ペプチド反応性抗体は病態の進行、すなわち、慢性肝炎から肝硬変、肝がんへの進行と相関を示した。一方、NS5A 2132-2142ペプチドに対する抗体は逆相関を示した。この結果は、33例のコホート研究の結果でも確認され、これら2種の抗体はHCV関連疾患のバイオマーカーとなり得ることが示された(Med. Microbiol. Immunol., 2007)。 ペプチドワクチンの臨床試験:HLA-A24陽性のHCV感染者でインターフェロンを基本とする治療に不応答の患者12名を対象としてペプチドワクチン第I相臨床試験を橋渡し臨床研究として実施した。これらの患者には、血中に抗ペプチド抗体の確認されたペプチドをワクチンとして投与した(テーラーメイドワクチン)。その結果、安全性および免疫学的有効性が確認された(Vaccine, 2007)。
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