研究課題
基盤研究(C)
本研究において(1)エンドセリン作用の抑制が抗肥満をきたす分子機構を解明し、(2)エンドセリン作用の抑制が糖、脂質代謝に及ぼす影響を解析し、(3)エンドセリン作用阻害による新たな抗肥満治療戦略を確立することを目的とした研究を遂行し下記の成果を得た。1.エンドセリン作用の抑制が抗肥満をきたす分子機構の解明申請者は予備的実験結果からエンドセリンの欠損が血管新生を抑制することによって脂肪組織の増殖が抑制されるという仮説をたて、以下の検討を行った。1)高脂肪食負荷前後の脂肪組織の組織学的検討2)血管新生に関わるサイトカイン(VEGF,bFGF,ET-1)の発現解析3)血管新生機能解析(培養血管内皮細胞の増殖、遊走、管腔形成能の解析)4)エネルギー代謝の検討(活動量、深部体温、酸素消費量、摂餌量の測定)その結果、エンドセリン欠損マウスでは摂餌量やエネルギー代謝に関しては野生型と差異を認めず,組織学的および機能的な血管新生能の評価により、私たちの仮説の正当性を証明することができた。2.エンドセリン作用の抑制が抗肥満を介して糖・脂質代謝に及ぼす影響の解析エンドセリン欠損マウスと野生型マウスを糖代謝、脂質代謝に関して比較検討することにより、エンドセリンを介した抗肥満作用がメタボリックシンドロームの改善に直結しうることを証明できた。3.エンドセリン作用阻害による抗肥満治療戦略の確立抗肥満薬としての臨床応用を見据え、以下の実験を遂行した。1)エンドセリンによる抗肥満作用の遺伝学的検討により、エンドセリンが脂肪組織における炎症に重要であることが明らかとなった。2)エンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタンを使用している患者における臨床的効果の検討で、HDL-コレステロールが有意に上昇していることが明らかとなり、現在症例を積み重ねている。
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