研究課題
基盤研究(C)
研究背景:急性肺傷害や急性呼吸促迫症候群の予後は極めて悪く、有効な治療法はいまだ確立されていない。我々は、従来から炎症性疾患における血液凝固因子の役割に着目し、炎症性肺疾患患者ではトロンビンや組織因子の産生や活性化が亢進し、抗凝固因子である活性化プロテインCやプロテインSがその病態形成に関与していることを報告した。研究目的と方法:本研究ではこれまでの研究成果をふまえて、肺胞上皮細胞、単球などを用いたin vitro実験でプロテインSの炎症性サイトカイン産生に対する効果について検討した。さらに急性肺障害モデルマウスでのin vivo実検によってプロテインSの炎症・免疫応答・急性肺傷害などにたいする抑制的効果を検討した。研究結果:プロテインS投与急性肺傷害マウスでは非投与マウスに比べ、MCP-1、TNFα、IL-6などの炎症性サイトカインの濃度は有意に低下した。また、プロテインSの投与マウスでは肺組織中の炎症性細胞の浸潤もコントロールマウスに比べ有意に減少した。また、in vitro実験ではプロテインSはA549またはTHP-1細胞からのTNFα、MCP-1の炎症性サイトカインを抑制した。結論:本研究の結果よりプロテインS、活性化プロテインCなどの凝固制御因子は急性肺障害の治療薬としての有用性が示唆された。
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