研究課題
基盤研究(C)
スフィンゴシン1リン酸(S1P)を産生するスフィンゴシンキナーゼ(SPHK)は肺への発現が多く、肺疾患において血管透過性の点から近年非常に注目されている。我々の研究ではSPHKが肺を構成する細胞の分化に重要であり直接肺障害に関与することを明らかにした。急性肺障害にかかわる線維芽細胞の形質転換による線維化シグナルについての検討を行い、従来のTGFβによるsmads、Rhoシグナルにスフィンゴシン代謝の関りがあることを米国胸部疾患学会で発表の上、論文報告(Am J Respir Cell Mol Biol, 2007)した。TGFβ刺激によってSPHK2に比しSPHK1の活性が引き起こされ、S1Pが合成される。合成されたS1Pが内在性のS1P受容体をtransactivationし活性型Rhoをrecruitするしくみを我々はsiRNA・蛍光染色法を用いた実験により初めて明らかにした。また前回の科学研究費(JSPS15590810)と関連し、SPHK阻害剤が卵白アルブミン吸入による急性喘息モデル・好酸球性肺障害に対する効果を検討した。静脈投与による抗炎症作用は限定的で好酸球炎症への効果は低く、吸入投与にて肺の炎症・気道過敏性を抑制した。SPHK活性を気道経由で抑制する投与方法が喘息への新たな治療ターゲットになると考えられ、成果を米国胸部疾患学会で口頭発表し、論文が受理された(Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 2008)。投与方法は今後他の肺疾患にも応用できると考えている。そのSPHKが気管上皮に局在することを動物実験で明らかになったことより気道上皮の分化にもSPHKが関与していると考えている。Air Liquid Interfaceという特殊な培養系を用いた杯細胞への分化にSPHKの活性が必要であることが初めて明らかにし、平成20年度米国胸部疾患学会で発表予定である。線維芽細胞の実験と合わせ、SPHKが病態において肺の形態変化に重要な役割を果たすことを我々の実験成果が示したと考える。
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Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol (In press)
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol (in press)
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ページ: 395-404
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