研究課題
基盤研究(C)
腎機能障害に伴う代表的合併症である骨病変(腎性骨異栄養症)と異所性血管石灰化(動脈硬化)は、近年慢性腎臓病に伴うミネラル、骨異常症(CKD-MBD)と命名され、Ca/P代謝異常が原因となる。腎性骨異栄養症と異所性血管石灰化発症とのクロストークを解明する目的で、高度の二次性副甲状腺機能亢進症(2HPT)を発症させるラットモデルを用い、異所性血管石灰化と骨病変の発症・進展を検討した。その結果、異所性石灰化を呈する高度の2HPTでは、骨吸収、骨形成とも亢進した線維性骨炎像が認められ、血管石灰化、骨病変の進展は2HPTの進行と密接に関連した。そこで、2HPTを発症した腎不全ラット副甲状腺内に各種のビタミンDアナログを直接注入し、2HPT、骨病変、石灰化の変化を検討した。アナログ注入に伴いPTH値は著明に低下し、腫大していた副甲状腺サイズは縮小した。この縮小は、副甲状腺細胞のアポトーシスに起因すること渉病理組織学的に証明された。ビタミンDアナログの注入、PTHの低下に伴い、線維性骨炎像は軽減し、この改善は骨形態計測値から確認された。しかし、いったん形成された異所性血管石灰化には、PTHの低下、骨病変の改善にもかかわらず有意な軽減は認められなかった。一方副甲状腺Ca受容体作動薬の大量投与でも副甲状腺に縮小がみられたことから、その機序をin vitroで解析したところ、副甲状腺細胞にアポトーシスの誘導が認められた。以上から、腎不全に伴うCa/P代謝異常は2HPTを介して骨病変と平行して異所性血管石灰化をもたらす。ビタミンDアナログ副甲状腺内直接注入やCa受容体作動薬による2EPTの修飾により、骨病変は改善するものの、異所性血管石灰化は残存し、両者の成立過程は共通である一方、修飾・治療過程のクロストークは異なると考えられた。今後クロストークのさらなる詳細の解明が必要である。
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