研究概要 |
我々は,酸化ストレスによる腹膜機能低下を,活性酸素種とNOの相互関係に着目し検討してきた。先ず酸化ストレスによる腹膜傷害の解析に,リアルタイムでのNO測定が必要と考えた。これまでNOの直接計測の報告はなく,NO動態の基本的知見を得ることを目的し,透析液排液中のNO濃度をNOセンサを用いて直接計測しその方法を確立した。それにひき続きCAPD療法中におけるNOおよび代謝関連物質の動態を検討することを目的とし,排液中のNO,NOS補酵素tetrahydrobiopterin(BH4),dihydrobiopterin(BH2),NOの合成阻害物質Asymmetric Dimethylarginine(ADMA)の濃度を計測した。21名の透析液排から約50mlのサンプルを採取した。各サンプル中のNO濃度をNOセンサで,BH_4,BH_2,ADMAの濃度はHPLC法で計測した。交換直前(腹腔内貯留時間:5〜6時間)の透析液排液(使用済液)中のNO濃度は,交換直後の透析液排液(交換直後液)中のNO濃度に比べて高値を示した(6.4±0.8nMvs.2.5±1.5nM;p<0.05)。またBH_4濃度も使用済液の方が交換直後液に比べて有意に高値であった(4.1±0.9ng/ml vs.0.3±0.2ng/ml;p<0.05)。NO濃度とBH_4の間には正の相関関係が見られた(p<0.05)。またADMA濃度は使用済液の方が交換直後液に比べて有意に高値であり,NO濃度と負の相関関係が認められた(p<0.05)。CAPD透析液中NO濃度は,滞留時間が長いほど高値を示し腹膜組織およびその周辺組織からのNO産生が示唆された。その産生変動にNOS補酵素BH_4,NOの合成阻害物質ADMAの関与が疑われた。
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