研究概要 |
TAR DNA-binding protein of 43 kDa (TDP-43)が,前頭側頭葉変性症(FTLD-U)やALSに出現するユビキチン陽性・タウ陰性封入体の主要な構成蛋白として同定され注目を集めている.一方,我々はこれまでALS,家族性ALS(FALS)の運動神経細胞においてGolgi装置の微細化が高頻度にみられることを報告しており,Golgi装置の形態変化と神経細胞変性とに何らかの関係があるものと推測している.今回,抗TDP-43抗体による脊髄前角細胞の免疫染色性とGolgi装置の形態変化との関連を免疫組織学的に検討した.ALS10例,対照3例の脊髄の3μm厚のミラー切片を作製し,抗TDP-43抗体とGolgi装置のマーカーである抗TGN-46抗体を用いて免疫染色を施行した.抗TDP-43抗体の染色性によって前角細胞を分類し,それぞれのGolgi装置の形態異常の頻度を検討した.対照例では抗TDP-43抗体で核が染色され,そのGolgi装置は糸くず状に染色された.ALSの脊髄前角細胞は抗TDP-43抗体で様々な染色性を示し,A型:正常パターン,B型:核及び細胞質ともに明らかな染色性(-),C型:核の染色性(-)で細胞質に顆粒状〜びまん性の染色性(+),D型:封入体形成(+)の4タイプに分類された.A型のGolgi装置は正常形態を示したが,B型からD型のTDP-43の染色性に異常がある大半の前角細胞においてGolgi装置に微細化がみられた.TDP-43に異常を来しているALS前角細胞ではGolgi装置の微細化がみられており,何らかの蛋白合成系に異常が存在すると考えられた.
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