研究概要 |
アルツハイマー型認知症の根本的治療を実現するためには,神経機能障害の本質的な病態と考えられているβ-amyloidおよびリン酸化tau産生を制御する治療法の確立が不可欠である.本研究課題は,コレステロール産生抑制剤として開発されたstatin(HMG-CoA還元酵素阻害剤)がβ-amyloidおよびリン酸化tau産生に及ぼす効果について,神経系の培養細胞モデルを用い,その分子基盤を明らかにすることを目的とした. 神経系培養細胞SHSY-5YおよびNeuro2aにアミロイド前駆体タンパク(APP)およびタウタンパクを安定発現させ,水溶性スタチン(pravastatin)および脂溶性スタチン(simvastatin, atorvastatin, lovastatin)を培養液に添加し,その効果を検討した. 脂溶性スタチンを添加すると,全長型APPとAPP・C末端断片の増加を認め,特に高濃度においてはβアミロイド42/40比率が増加した.一方,水溶性スタチンにそのような効果は認めなかった.また,タウのタンパクレベルおよびリン酸化タウのレベルには,いずれのスタチンも影響を及ぼさなかった. 以上より,脂溶性スタチンは細胞膜を透過し,APPの代謝に影響を与える効果があることが示唆された.
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