研究課題
基盤研究(C)
われわれが新規に開発したマウス慢性脳低灌流モデルは長期にわたって脳血流の軽度低下が認められ、血液脳関門の機能異常、大脳白質病変、およびワーキングメモリの選択的障害を呈することから、皮質下血管性認知症の動物モデルと考えられている。さらに、本モデルでは脳低灌流後にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の活性化が報告されている。基底膜を構成する細胞外マトリックス蛋白はMMPsの基質となるため、誘導されるMMPsが血液脳関門障害の原因となることが推測されている。本研究では慢性脳低灌流モデルの白質病変形成機転におけるMMPs活性化の意義を明らかにする目的で以下の実験を行った。まず最初にラット慢性脳低灌流モデルにMMPs阻害薬(AG3340)を投与すると、血液脳関門の障害と白質病変の出現が抑制された。MMPsはさまざまなアイソザイムからなるが、慢性脳低灌流モデルではMMP-2が主に誘導されているため、MMP2ノックアウトマウスに慢性脳低灌流負荷を加えたところ、MMP2ノックアウトでは野生型で認められる血液脳関門の障害、白質病変が抑制された。ついで、MMP2ノックアウトマウス、野生型マウスに慢性脳低灌流負荷を行い、4% Evans blueを静脈内投与して一定時間後に脳切片を作成した。血管外漏出したEvans blue陽性面積をNIHイメージアナライザーで定量したところ、MMP2ノックアウトマウスでは野生型に比べEvans blue陽性の血管面積が有意に少ないことが明らかになった。以上より、MMP2が慢性脳低灌流脳の血液脳関門障害を介して白質病変形成に関与していることが明らかになった。また、MMPの阻害薬が白質病変を抑制することから新たな治療薬となる可能性が示された。
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