研究課題
基盤研究(C)
我々は、多発性硬化症(multiple sclerosis,MS)患者の脳脊髄液中にhnRNP A2/B1に対する抗体が検出されることを見出し、これがMSの疾患マーカーになりえることを提唱した。本研究では、このことを結論づけることを目的として、鹿児島大学神経内科の症例で疾患名、患者背景を隠して当科に送られてきた105髄液サンプルについて抗hnRNP-A1およびA2/B1抗体を測定した。測定結果を鹿児島大学に通知後に疾患名が開示される盲検法で行った。抗hnRNP-A1抗体および抗hnRNPA2/B1抗体はMS患者髄液で有意に検出された。抗多発性硬化症すべての症例がなんらかの神経症状を有し、さらに抗hnRNP A1抗体はhuman T-lymphotropic virus type-I(HTLV-I)-associated myelopathy(HAM)患者で有意に検出されるとの報告があるが、抗hnRNP A1抗体の頻度においてHAMと他疾患間に有意差はなかった。今回の研究において、MS患者の約90%に髄液で抗hnRNP A2/B1抗体が検出され、MSのマーカーになりえることを確認した。しかし、他疾患でも低頻度であるが検出されることも判明した。この研究成果は、神経治療学会の学会誌{神経治療学}および国際神経ウイルス学会の機関誌であるJ Neurovirologyに掲載された。さらに、抗hnRNP A2/B1抗体はMS患者の90%以上で髄液中に検出されるが、HAMなどの他神経疾患でも検出される。MSでは疾患に関連して抗hnRNP A2/B1抗体が生成され、他疾患では非特異的に生成されるとの仮説を想定すると、MSと他疾患では抗hnRNP A2/B1抗体の認識部位が異なる可能性が推測される。そこで、hnRNP B1の一部を欠く9種のGST-hnRNP B1を生成し、MSで検出される抗hnRNP A2/B1抗体がどの部位を認識しているのかを検討した。その結果、MSで検出される抗hnRNP A2/B1抗体が認識しているのはアミノ酸配列で234-305の箇所に存在するEpitopeであることが明らかになった。現在、このEpitopeがMS特異的であるかを解析中であり、論文を準備中である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
神経治療学 23
ページ: 99-105
Journal of Neurovirology 14
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Shinkeichiryougaku 23
Journal of Neurovirology (印刷中)