研究課題
基盤研究(C)
目的と方法:実験的脳梗塞モデルにわける骨髄細胞移槙による機能改善機序として神経再生および神経栄養因子放出が考えられているが、虚血再潅流直後の骨髄細胞移植による脳保護効果を検討したものは少ない。今回の研究ではラット一過性中大脳動脈閉塞モデル(90分)を用いて、培養を必要としない骨髄単核球細胞(BMMCs)を再潅流直後に総頸動脈または大腿静脈内に投与し、投与ルートの違いによる脳保護効果を検討し、次いで培養を必要とする骨髄間葉系幹細胞(BMSCs)を再潅流30分後に経静脈的に投与して脳保護効果を検討するとともに、神経保護効果を有する免疫抑制薬FK506との併用にて脳保護効果を増強できるかを検討した。さらにBMSCs単独投与1ヵ月後の移植細胞の分布・分化、MRIによる移植細胞の経時的動態を検討した。結果:BMMS経動脈投与群で梗塞体積縮小および神経徴候改善効果を認めたが、経静脈投与群では効果を認めなかった。経動脈投与群は経静脈投与群と比べて虚血側により多くのBMMScの集積を認めた。再潅流30分後のBMSCs単独投与群では明らかな脳保護効果を認めなかったが、BMSCs移植にFK506を併用する事で梗塞体積縮小および神経徴候改善を認めた。なお移植1ヵ月後においては、わずかに生着したBMSCsが神経細胞やアストロサイトへ分化していた。超磁性体鉄でラベルした移植細胞はMRI T2強調画像で観察できたが、経時的にその数を減少することが確認できた。結論:BMSC移植は培養期間を必要とするため急性期投与への臨床応用は現時点では難しいが、培養を必要としないBMMC移植は投与ルートの選択によっては有効性が期待できること、およびBMSC移槙にFK506を併用することで脳保護効果を増強させ得ることが示唆された。脳梗塞モデルに対する骨髄細鞄移植による脳保護効果を高めるためには、虚血脳内により多くの移植細胞を集積させることおよび移植細胞周囲の環境を整える事が重要であると考えられた。
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