研究概要 |
神経細胞間電気的共役の神経疾患への関与を明かにするため,遺伝性てんかんモデルであるELマウスの海馬でのGAP junction機能を解析した.Gap junctionの構成蛋白であるコネキシンの阻害剤であるCarbenoxolone(100μM)をもちいて,ELマウス海馬に誘導したてんかん脳波の成因にgap junctionがどのようにかかわっているのかを調べた.てんかん脳波の誘導には海馬スライス標本にGABA受容体阻害剤であるビククリン(10μM)を灌流投与(BMIモデル),NMDA受容体を活性化させるMg free人工脳脊髄液を灌流する(0-Mgモデル),人工脳脊髄液のカリウム濃度をあげる (high-Kモデル,9.25mMK)の3種類をもちいた.CarbenoxoloneはBMIモデルとhigh-Kモデルのてんかん波を完全に抑制し,0-Mgモデルでは周波数の減少がみられた.これら抑制効果は人工脳脊髄液灌流下においても約1時間以上持続した.この結果は正常マウスと同様であったことから,ELマウスのてんかん原性にはGap junctionの異常は関与しないと考えられた. ヒトにおけるGAP junctionの機能を解明するために,難治性てんかん患者において外科治療の際におこなわれる慢性硬膜下電極による皮質電位記録からてんかん活動を形成する神経ネットワークを研究した.大脳皮質のてんかん原性部位は独立した多焦点のてんかん原性領域から構成されている場合があることが示唆された.これらのてんかん原性領域が結合することによって,てんかんネットワークを形成していた.領域間の結合の程度は領域間によってばらつきがあることが示された.これらの結合にはgap junction等の神経伝達が関与していると推測された.
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