研究概要 |
mRNA監視機構であるnonsense-mediated mRNA decay(NMD)の構成分子14個すなわちSMG-1、Upf1、p130、SURF complex(eRF1,eRF3a,eRF3b)、exon junction complex(Y14,MAGOH,eIF4A3,BtZ,RNPS1)、Upf2、SMG6、SMG7を標的にsiRNAを作成し、モデル細胞としたUllrich病患者繊維芽細胞に導入してNMDの抑制とその病態に及ぼす影響について検討した。モデル細胞では、collagen VI α2鎖のtriple helical domainをコードするexonにホモの欠失があり、フレームシフト変異によるPTC出現のためNMDが作動してcollagen VIα2 mRNAは分解される。導入した各々のsiRNAの細胞内発現によりNMDは抑制されたが、Upf1、SMG-1、p130、MAGOH、BtZ、SMG6、SMG7の7個の因子によるNMD抑制で、collagen VIα2 mRNA、細胞内collagen VIの発現が高いことが明らかになった。Upf1、SMG-1、p130、MAGOHのノックダウンでは、細胞外マトリックスにおけるcollagen VIの発現も高い傾向にあった。各因子のノックダウンが細胞生理機能に及ぼす影響について、細胞増殖、細胞周期、細胞ストレス応答への影響を検討したが、siRNA導入1週目までの短期的な影響はほとんど認められなかった。本研究により、NMD抑制による治療標的の最適な候補因子としてUpf1、SMG-1、p130、MAGOH、BtZ、SMG6、SMG7の7個のNMD componentが得られた。これらの因子の中期的、長期的なノックダウンが細胞生理機能に及ぼす影響についてはさらに検討する必要がある。
|