研究概要 |
解糖系の律速酵素である誘導型6-phosphofructo-2-kinase(inducible PFK-2; iPFK-2)に着目し、インスリン感受性組織におけるiPFK-2の発現と機能の解析を行った。マウス骨格筋からmRNAを抽出し、RT-PCRを行い骨格筋に発現しているPFKFB3のアイソフォームをクローニングした。3種類のアイソフォームの発現を確認した。これらをPFKFB3-ACDG、 PFKFB3-ACG、 PFKFB3-AGと命名した。次にマウス骨格筋に発現するPFKFB3-ACDGとPFKFB3-ACGの違いを解析するため、それぞれを発現ベクターに組み込み、HEK293細胞に遺伝子導入した。さらに安定発現株を得るために、薬剤選択を行いPFKFB3-ACDG、 PFKFB-ACGを高発現する細胞株を樹立した。これらの細胞におけるブドウ糖の取り込みと細胞内F2, 6BPを測定した。Empty vectorと比較し、 PFKFB3高発現293細胞ではいずれのアイソフォームでもブドウ糖の取り込みが亢進し、細胞内F2, 6BP量も著明に増加していることが明らかになった。したがってこれらの骨格筋に発現するアイソフォームは解糖系を活性化する作用が強く、キナーゼ活性が優位であると思われた。糖尿病とPFKFB3の関連を解析するため、2型糖尿病のモデルマウスであるdb/dbマウスの各インスリン感受性臓器でのF2, 6BPを測定した。正常マウスと比較し、糖尿病マウスでは脂肪で著明にF2, 6BP量が増加しているが、骨格筋では明らかな差は認めなかった。したがって・インスリン感受性組織である骨格筋の解糖系の制御にiPFK-2が極めて重要な役割をはたしている可能性が示唆された。
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