研究概要 |
1型糖尿病は自己免疫による膵β細胞破壊によって生じる疾患であるが、そのβ細胞破壊には発症前、後を通じて多様性がある。HLA領域は1型糖尿病の疾患感受性に最もつよく影響する。本研究では、1型糖尿病におけるβ細胞破壊の時間経過をHLA-classI、classIIアレルとの関連において解析した。266例の1型糖尿病患者について発症様式を検討し、またそのうちの196例については、経時的にβ細胞の評価を、高感度Cペプチドアッセイを用い行った。HLA-classI、classIIアレルのタイピングをPCR-RFLP法で行った。β細胞機能の廃絶はHLA-A24とDQA1*03を有する患者、HLA-DR9を有する患者でこれらのアレルを有しない患者に比べ早期に起こった(それぞれ、p=0.0057とp=0.0093)。この三者(A24,DQA1*03,DR9)を有する患者では早期のβ細胞機能の廃絶がさらに顕著になった(p=0.0011)。また急性発症1型糖尿病でこの3つのアレルの組み合わせが緩徐進行1型糖尿病に比し、多かった(p=0.0002)。一方、劇症1型糖尿病症例を除外すると、HLA-DR2を有する患者ではβ細胞機能の廃絶が起こりにくかった(p=0.011)。A24,DQA1*03,DR9の3つのアレルの組み合わせは急性発症および早期のβ細胞機能の廃絶に関与することが明らかとなった。一方、DR2はβ細胞破壊に抵抗性に働くことが示された。
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