研究概要 |
新たなCRF-urocortin family peptides及びCRF受容体の発現調節機構の解明とストレス下における作用分担を明らかにすることを目的に研究を行った。 (1)視床下部CRFを制御する上位のホルモンの一つとして、pituitary adenylate cyclase-activating polypeptideによるCRFニューロンの活性化作用機序について解明した(J Encocrinol 195, 2007)。また、ストレス反応の雌雄差をもたらす因子として、エストロゲンの視床下部ニューロンへの影響を明らかにした(Peptides 29, 2008)。 (2)CRF受容体の統御機構として、正常下垂体ACTH細胞では、CRF添加でCRF受容体mRNAはdown-regulationされるのに対して、ヒト及びマウス下垂体ACTH腫瘍細胞ではup-regulationされることがわかっている。また、CRFによるCRFR1 mRNAの速いdown-regulationについては、CRFによりCRFR1mRNAの不安定化が促進されることを明らかとしてきた(Mol Cell Endocrinol 243,2005)。今回の更なる検討では、下垂体CRFR1のdesensitizationを引き起こす因子として、G protein-coupled receptor kinase 2が関与していることを明らかにした(Endocrinology 147 (1),2006)。 (3)膵ベータ細胞の実験により、CRFR2の活性化は、CRFR1を介した細胞内Ca^<2+>の増加作用を阻害する可能性があると考えられた(Peptides 27,2006)。このことから、CRFR2アゴニストであるUcnによるストレス反応緩和作用が示唆された。 (4)これまでの検討により、CRFノックアウトマウスの利用で、interleukin(IL)-6はCRF非依存性に下垂体POMCの合成に影響を与えることが証明された(Endocrinology 146(12),2005)。免疫系では、Ucn2がIL-10を介して感染を悪化させることが明らかとなった(Endocrinology 146(11),2005)。今回の検討により、血管平滑筋細胞では、Ucnはcyclooxygenase経路を介してIL-6を誘導することが明らかにされ(Endocrinology 147(9),2006)、更に、この誘導はグルココルチコイドの制御を受けることが証明された(Peptides 28,2007)。
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