研究課題
基盤研究(C)
DHCR24ノックアウトマウス胎児繊維芽細胞(KO MEF)は過酸化水素負荷により野生型MEFに比し速やかにアポトーシスに陥った。この時、ストレスキナーゼ(SAPKs)であるp38MAPK、JNK、ASK-1の強い持続的な活性化が観察された。細胞内活性酸素(ROS)を測定すると、過酸化水素負荷によりKO MEFでは野生型に比し多量のROS産生が観察された。DHCR24発現組換えアデノウイルス(Ad-DHCR)を作製し、これをKO MEFに感染させると、細胞内ROS産生が減少し、SAPKsの持続的な活性化が抑制された。以上の結果からDHCR24はROS消去活性を有し、これにより抗酸化ストレス作用を発揮することが示唆された。次に、N塑糖鎖付加阻害剤tunicamycin(TM)による小胞体ストレスのKO MEFに及ぼす影響を検討した。KO MEFにTMを負荷すると48時間後にはほとんどの細胞がアポトーシスに陥った。一方で、野生型はTMに抵抗性だった。Ad-DHCRを感染させると、KO MEFはTMに抵抗性となった。Bip/GRP78の発現はKO MEF、野生型で差が無かったが、p38MAPKの活性化を検討すると、野生型やAd-DHCR感染KO MEFでは一過性の活性化しか観察されなかったのに対し、KO KEFでは持続的な活性化が認められた。また、TM添加によりKO MEFで強いROS産生が認められ、これはAd-DHCR感染により減弱した。以上の結果から、TMはROS産生を介してストレスキナーゼの持続的な活性化を引き起こし、KO MEFのアポトーシスを誘導すること、DHCR24は小胞体に局在するROS scavengerで、TMによるROS産生を減弱することにより小胞体ストレスによるアポトーシスを抑制的に制御することが明らかになった。
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