研究概要 |
白血病細胞における異常シグナル活性化と抗癌剤誘導性チェックポイント活性化およびアポトーシス制御機構の解明と新規治療法開発への応用を目指して研究を行った。まず、BCR/ABLによる異常シグナル活性化にて腫瘍化した白血病細胞において、rottlerin等の薬剤がミトコンドリア酸化的リン酸化の脱共役機序により、imatinibによるアポトーシスの誘導を相乗的に亢進することを見出した(Oncogene26:2975-2987,2007)。さらに、Mdm2阻害剤でp53発現誘導効果を有するnutlin-3aおよびBc12ファミリーの拮抗薬であるABT-737についても検討を行い、これらの薬剤がミトコンドリアにおけるBaxの活性化とミトコンドリア外膜透過性の亢進をimatinibと相乗的に誘導することで、BCR/ABL発現細胞に対するimatinibの効果の相乗的亢進をもたらすことを見出している(日本血液学会2007年総会にて発表、投稿準備中)。これらのことは種々のBCR/ABL発現白血病臨床検体やimatinib耐性変異を有するBCR/ABL発現細胞でも確認され、将来への臨床応用も期待できる。また、造血細胞の細胞周期制御に重要な役割を果たすCyclin D2が、280番目のスレオニンのGSK3βやp38によるリン酸化により蛋白レベルで発現が調節されている事を見出し、白血病臨床検体白血病細胞を含め増殖シグナルによるcyclin D2蛋白増加と細胞ストレスによる減少の分子機構を明らかにした(Oncogene26:6630-40,2007)。急性前骨髄球性白血病に著効を呈する亜砒酸による白血病細胞のアポトーシス誘導と耐性獲得機構についても検討し、ROSを介したAsk1活性化の意義を明らかにした(BBRC355:1038-44,2007)。
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