研究概要 |
多発性骨髄腫は現在も難治性の造血器腫瘍であり,新しい治療戦略の開発が求められている。そこで,本研究では骨髄腫細胞に特異的に高発現しているHM1.24/BST2(CD317)に着目し,本分子に対する新規モノクローナル抗体(b-76-8)の治療への応用の可能性について研究を進めた。まず,本抗体の細胞内分布について検討を行ったところ,細胞表面に結合した後,receptor-mediated endocytosisにより,60分後には約80%が骨髄腫細胞内ヘインターナライズされることが明らかとなった。また,b-76-8抗体は細胞質のトランスゴルジ網に集積することが明らかとなった。次に,細胞毒であるメイタンシン(DM1)を結合させたb-76-8-DM1抗体を作製し,in vitroやin vivoにおける細胞傷害活性について検討した。b-76-8-DM1はb-76-8やDM1単独と比較し,骨髄腫細胞の細胞周期を著明に抑制し,高率にアポトーシスを誘導した。さらに,b-76-8-DM1はマウス骨髄腫モデルにおいて,b-76-8抗体単独やDM1より優れた抗腫瘍効果を発揮した。このような細胞傷害活性は骨髄腫細胞に特異的に認められた。以上の結果より,b-76-8抗体は結合物質を特異的に骨髄腫細胞内に伝達させる機能を有しているものと考えられ,HM1.24/BST2(CD317)は多発性骨髄腫に対する新しいターゲティング療法の標的分子として重要である可能性が示唆された。
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