研究課題
基盤研究(C)
研究目的は、Cb1遺伝子によるユビキチン・プロテアソームシステムを介したPI3-kinase(PI3K)シグナル伝達経路の負の制御機構の解明と、造血細胞におけるCblの機能を明らかにすることである。1、Cbl-siRNA発現ベクターの遺伝子導入によりCb1発現を抑制したヒト赤白血病細胞F-36P細胞(F-36P-siCb1)を用いた解析(1)WST-1・annexin V assayを用いた細胞増殖・生存の解析:F-36P-siCb1細胞は、mock細胞に比べ、低濃度のEPO存在下において有意に増殖し、annexin V陽性細胞の比率も減少していた。また、F-36P-siCb1細胞は、EPO非存在下でのannexin V陽性細胞の比率もmock細胞に比べ、減少していた。(2)F-36P-siCb1細胞では、恒常的なAktの活性化が認められたが、未刺激のmock細胞では、Aktの活性化は認めなかった。また、両者ともにEPO刺激によりAktの活性が増強した。しかし、F-36P-siCb1およびmock細胞におけるEPO刺激後のErk1/2の活性化の経時的な変化には、差を認めなかった。2、Cb1によるPI3Kシグナル伝達経路の制御機構:F-36P細胞では、EPO刺激によるCb1-Y731(PI3Kの調節サブユニットの結合部位)のリン酸化が、Srcキナーゼ阻害剤PP1あるいはdominant-negative Src発現により阻害されたが、Jakキナーゼ阻害剤AG490では阻害されなかった。COS7細胞を用いた共発現により、Jak2ではなくSrcが、Cb1-Y731をリン酸化することによりCb1はp85と会合した。これらの結果より、EPO受容体を介するシグナル伝達において、SrcがCb1-Y731をリン酸化することにより、PI3Kと会合し、PI3K/Aktシグナル伝達経路を負に調節している。
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