研究概要 |
本研究課題で行った研究にて、申請者は以下の知見を得た。 (1)小児急性リンパ性白血病におけるLOH解析とその臨床的意義 染色体6q,9p,11q,および12pのloss of heterozygosity (LOH)を解析し、その頻度および臨床的意義について解析した。多施設共同研究(ALL-BFM 90)に参加した244例の初発ALLにつき、31個のmicrosatellite markerを用いてLOH解析を行った。169例のALL(69%)で、少なくとも1つのマーカーにおいてLOHが認められた。それぞれの染色体におけるLOHの頻度は、6q,49例(20%);9p,97例(40%);11q,29例(12%);12p,60例(25%)であって。臨床データの解析では、6qにLOHを有する症例は若く(p=0.01)、T cellタイプが多かった(9=0.0001);11qにLOHを有する症例は寛解導入療法に良好に反対した(p=0.02);12pにLOHを有する症例は若く(p=0.005)、B cellタイプが多く(p=0.001)、予後良好であった(p=0.05)。 (2)小児および成人急性リンパ性白血病(ALL)における癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化の相違の検討。 小児ALL10例および、成人ALL9例を対象に、10遺伝子について、methylation-specific PCR法を用いて、DNAメチル化パターンを解析した。P15,p16, RARβ, FHIT遺伝子は両者でメチル化が認められたが、p14,Rb, MLH1, DAPK遺伝子は全くメチル化していなかった。一方、APCとRIZ遺伝子は成人ALLでのみメチル化していた。RARβ遺伝子のメチル化は小児ALLより成人ALLで有意に高頻度であった(p=0.01)。メチル化している遺伝子数は小児ALLより成人ALLが多かった(p=0.01)。以上の結果より、小児ALLと成人ALLは発症機序が異なっていると考えられた。
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