研究概要 |
白血病細胞のアポトーシスとオートファジーの振り分け機構を解明するため,今回ビタミンK2(VK2)を中心に白血病細胞株HL-60に対する効果を検討した。以前より我々は,VK2はHL-60細胞のアポトーシスを効率よく誘導することを報告してきた。一方,BCL-2過剰発現株HL-60bc1-2では,アポトーシス耐性を獲得して単球系への分化が誘導されるものの,培養時間を延長することで,やがては細胞死が誘導される。また,HL-60bc1-2にVK2を作用させることで,原形質内の空胞形成,acidic vesicular organelles(AVO)の増加ならびに電顕(EM)上で細胞内小器官のautophagosome形成が観察された。また,一部では断裂化した核の自食胞が形成された後に,アポトーシス像に移行するものも観察された。一方,BCL-2低発現株HL-60neoではVK2添加培養48hr以内ではHL-60bc1-2を上回るAVOならびにEM上autophagosome形成が観察されたが,72hr以降ではアポトーシス誘導が顕著となった。3-MA添加によりHL-60neo,HL-60bcl-2ともにVK2添加後の細胞死が阻害され,AVO形成も抑制された。また,siRNA ATG7を用いたATG7のノックダウン,および,Tet-off ATG5 MEFの系でもVK2による細胞死が抑制された。以上よりオートファジーとアポトーシスは同時に並行して誘導され,個々に独立した現象ではないことが判明した。一方,HL-60bc1-2のようにBCL-2高発現によりミトコンドリア膜の安定化によりアポトーシスが回避される場合には,HL-60neoに比較に比較して相対的に"autophagic cell death"が顕在化することが示唆された。また,ここで誘導されるオートファジーは"autophagic cell death"として機能していることが明らかとなった。この現象を他の抗がん剤に拡大して検証していく予定である。
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