研究概要 |
同種骨髄移植を必要とする患者で、HLA適合同胞が存在するのは、25%程度である。このため、HLA半合致(2-3抗原不適合)ドナーは、同種骨髄移植において、HLA適合ドナーが得られない場合の代替ドナーとして考えられてきた。しかし、通常の方法で移植を行ったのでは、移植片対宿主病(GVHD)が高頻度で発症し、成功しないとされている。そこで、我々は、移植前後の炎症性cytokineの発生を抑制することにより、移植片からT細胞を除かずに、HLA半合致移植が可能になることを、臨床試験とマウスの実験モデルを用いて、証明することを本研究の目的とした。 臨床試験では、1)ミニ移植(移植前処置を軽減)の形を取ること、2)中等量のsteroidを用いることの2つの手段により、移植前後の炎症性cytokineの発生をblockすることを試みた。このような考えの下、我々はHLA半合致ミニ移植を行い、生着率96.2%、重症GVHD発症率20%と良好な成績を得た(Biol Blood Marrow Tr,2006;12:1073)。このHLA半合致ミニ移植のプロトコールは、その有用性を確認すべく、現在、厚生労働省の班研究として多施設共同臨床試験(I/II相試験)が進行中である。一方、中等量steroid剤などで、cytokineのblockを行う移植方法でも、生着率100%、重症GVHD発症率40%と良好な成績を得ることができた(Experimental Hematology,2008:36:1-8)。このように、HLA半合致ドナーは代替ドナーとして、feasibleであるという結論を得た。 HLA半合致移植が成立するmechanismを解明するため、MHC不適合のマウス移植モデルを作成した。B6C3F1(H-2^<b/K>)→BDF1(H-2^<b/d>)の移植の系で、8.5Gyの全身放射線照射(TBI)の前処置を用いると、80%のマウスがGVHDのため死亡する。一方、4.5GyのTBIで移植すると、ドナー細胞の生着は起こるものの、致死的なGVHDが発症しないことが判った。この両群で比較検討したところ、GVHDの標的臓器である肝臓、消化管では、TBI8.5Gy群で有意にドナーT細胞の浸潤が増加しており、ドナーT細胞の活性化のmagnitudeではなく、標的臓器の炎症の強さが、GVHDの重症度を決定したと考えられた(manuscript in preparation)、現在、さらにそのmechanismをさらに追求している。
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