研究概要 |
ケトン体代謝異常症の分子病態について,蛋白3次構造変化とスプライシング異常を中心に解析を行った.フィンランドのオウル大学との共同研究によりヒトのミトコンドリアアセトアセチル-CoAチオラーゼ(T2)の結晶構造を初めて明らかにし,T2がカリウムイオンで活性化されるメカニズムを明らかにし,詳細なKineticsについて明らかにできた.遺伝子変異によるアミノ酸置換がT2蛋白およびSCOT蛋白に与える影響の解明については患者において同定されたミスセンス変異についてはTransient expression analysisを行い、残存活性のある変異については、変異蛋白の酵素安定性を検討した。T2欠損症において新規7変異についての解析とその変異の上記3次構造における変異の与える影響について解析し、E252del変異がKm変異で、それはE252が属するループ構造がこのアミノ酸の欠失によりその方向性が変化することによる基質トラップへの影響によることが疑われた。またSCOT欠損症においてエクソン6最後の塩基における1塩基置換がエクソン6、エクソン6、7のスキップを来す原因について核内、細胞質のRNA(トランスクリプト)を解析して、その病態にnonsense mediated mRNA decayが関わっていることを示唆できた。スプライス異常と考えられた症例の解析ではAlu配列による遺伝子の再構成が同定され,T2遺伝子においてもAlu配列を介した遺伝子再構成がこれで複数同定され,稀な病因ではないことが明らかとなった.T2欠損症でスプライシング異常をきたしたGK43においてはエクソン内の1塩基置換により,すぐその上流のcryptic splice donor部位が活性化されることをmini geneを用いたスプライシング実験で明らかにした.
|