研究課題
基盤研究(C)
遺伝性神経変性疾患のひとつであるGM1-ガングリオシドーシス(β-ガラクトシダーゼ欠損症)のモデルマウス(β-ガラクトシダーゼ・ノックアウトマウス)を用いて、細胞移植による治療研究を行った。移植用細胞は、ヒトβ-ガラクトシダーゼを高発現するトランスジェニックマウスから調整した。ノックアウトマウス、トランスジェニックマウスともにC57BL/6由来とした。移植実験は、(1)成マウスの骨髄より採取した間葉系幹細胞株、(2)胎生12〜13日の胎仔の大脳より得た胎生期脳細胞、および(3)(1)と(2)の混合細胞の3とおりで行った。それぞれの調製細胞を生後1日齢のβ-ガラクトシダーゼ・ノックアウトマウスの脳室内に移植し、移植細胞の生着期間とGM1-ガングリオシドの蓄積を抑制する治療効果を見た。移植後2,4,8,12,24週の各々の時点で、(1)、(2)、(3)各群を生着細胞数、生着期間、およびGM1-ガングリオシド蓄積に対する効果について比較検討した。生着細胞数および生着期間は、X-GaI染色にてヒトβ-ガラクトシダーゼ強発現の細胞の量により判断した。(1)の細胞を移植したマウスでは、移植後24週においてもヒトβ-ガラクトシダーゼ強発現細胞を認めたが、(2)、(3)の細胞を移植したマウスでは、移植後12週ですでにヒトβ-ガラクトシダーゼ強発現細胞はかなり減少しており、有意差があった。脳ホモジネートにおけるβ-ガラクトシダーゼの活性も染色度の増強に応じて上昇し、GM1-ガングリオシド蓄積は生着細胞の生着期間に依存して減少が認められた。しかし、同系統マウス間の移植にもかかわらず移植細胞は8週を過ぎると減少傾向にあり、ホストによる排除作用が始まった。長期生着の達成には、ホスト側の免疫をコントロールする必要があると考察された。
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