研究課題
基盤研究(C)
小児白血病の治療成績は、化学療法の進歩や造血幹細胞移植術の導入などにより大きく改善した。しかし、依然として不幸な転帰をとる患児が多数存在する。本研究では、小児白血病患児に対する樹状細胞(dendritic cell,DC)療法の可能性を検討し、従来の治療法によって救命できなかった白血病患児に対する新たな治療法を開発することを目的とする。(1)高い有効性を持つDC療法を開発するために、白血病細胞をDCへと分化誘導することを試みた。白血病患児より得られた白血病細胞をGM-CSF、TNF-α、Flt-3 ligand、IL-4の存在下で無血清培地にて2週間培養したところ、急性骨髄性白血病M4、M5a では、CD11c、CD80、CD83、CD86が陽性化しDCへの分化が観察され、白血病細胞由来のDCが直接細胞傷害性T細胞を誘導する可能性を見いだした。しかし、急性巨核芽急性白血病(M7)では、樹状細胞への分化は観察されなかった。(2)DCの機能に関連する遺伝子群を同定するために、サイトカイン関連遺伝子の発現パターンを解析したところ、臍帯血中DCと成人末梢血中DCとの間に相違が認められた。臍帯血中未熟DCは細胞周期関遺伝子、アポトーシス抑制性遺伝子の発現が高い、増殖能が高い、細胞死に陥りにくい、などの特徴が示唆された。一方、成人末梢血中成熟DCはTh1タイプの免疫誘導能が高い可能性が示唆された。(3)有効なDC療法を可能とするために、DCを活性化することが知られているセンダイウイルスベクター利用の予備研究を開始した。小児悪性腫瘍の患児から採取した末梢血幹細胞から分化誘導したDCへ温度感受性非伝搬型組換えセンダイウイルスベクター(ts-rSeV/dF)を作用させたところ、得られたDCは治療効果を期待できるレベルにまで活性化可能であるとの結果が得られつつある。
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