研究概要 |
生後約8週のC57BL/6マウスの脛骨および大腿骨より骨髄細胞を採取し,前日に8.5Gy照射されたBALB/cマウスの尾静脈より2x10^7細胞を注入したところ移植片対宿主病(GVHD)を発症するも長期生存することを確認した。重症GVHDマウスモデルを作成するために、C57BL/6の脾細胞を各種細胞数に調整して、骨髄細胞と同時にBALB/cマウスに注入することにより種々の重篤度のGVHDを発症するモデルを確立した。間葉系幹細胞(MSCs)のGVHDに対する予防または治療的効果を検討するために、ドナーであるC57BL/6骨髄からMurine MesencultにてMSCsを樹立した.骨髄細胞を培養し、adherentcellの継代培養を続けることにより安定したMSCs培養系が確立された。樹立したMSCsの性質を細胞表面マーカーをフローサイトメーターにて検討したところCD45-,CD11b-,Sca1+,CD44+であり、また脂肪細胞、骨芽細胞に誘導され、MSCsであることを確認した。作製した種々の重篤度を示すGVHDモデルマウスに5〜10x10^5MSCsを骨髄移植同日、骨髄移植翌日など細胞数、骨髄移植とのタイミングを種々変えて移植した。すべてのマウスは、移植後28日まで観察した。観察項目は(1)体重(2)臨床的GVHD症状スコア(3)死亡日(4)死亡した場合はGVHD主要臓器を採取し病理学的所見を観察した。さらに堀らが新たに見出したGVHDバイオマーカー候補であるCCL8の血漿濃度を定量した。CCL8血漿濃度定量に当たっては新たにマウスCCL8由来合成ペプチドを4種類作成しキャリアを結合後各3匹の家兎に免疫し、抗体化を免疫ペプチドに対する結合性で検討した。得られたポリクローナル抗体のすべての組み合わせを検討し、感度特異度がもっとも良好な組み合わせの抗体を用いてELISA(enzyme linked immunosorbent assy)を構築した。本ELISAの最小検出感度は約70pg/mLであった。このELISAにてGVHD発症マウスおよびシンジェネイク骨髄を移植したコントロールマウスでの血漿濃度を検討したところ骨髄移植後7,14,21,28日いずれの時点でもGVHDマウスモデルにおいてCCL8がコントロールマウスに比較して10倍以上検出された。しかし今回作成した重症GVHDマウスモデルでは、hyper-acute GVHDとなるため、MSCs投与のみではGVHDによる死亡率の減少、臨床症状の軽減、血漿CCL8濃度の低下などの明らかな効果は認められなかった。MSCs細胞数、投与時期、補助療法などをさらに検討する必要があることが示唆され、現在準備中である。
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