研究概要 |
ウイルス感染は、気管支喘息(喘息)の増悪および発症に関与している。今回、小児喘息発作の原因ウイルスを同定し、喘息の病態に重要な好酸球の活性化及びサイトカイン産生を検討した。群馬県立小児医療センター外来受診及び入院したのべ576名(男児370名、女児206名、平均年齢3.97歳)の喘息児のうち発作時にウイルス学的検索をし得た157名中、ライノ46名、RS43名、エンテロ18名、その他のウイルス18名、未検出が32名であった。また、末梢血好酸球数、血清中の好酸球由来組織傷害性蛋白の1つであるEosinophil cationic protein(ECP)、サイトカイン/ケモカインの検討では、非発作時に比べ、発作時でECP, IL-5,6,8,10が有意に上昇していた。各ウイルスによる発作群間の比較では、IL-5のみ、ライノ、エントロ、その他のウイルス群でRS群に比べて有意に高値を示した。以上より、ライノウイルス感染等による喘息発作時の病態には、好酸球の活性化が関与している可能性が考えられた。さらに治療前に全身性ステロイドを投与していない患者で発作後の全身性ステロイド治療の効果を治療前後で比較すると喘息発作時に有意に上昇していたECP, IL-5, IL-6は治療後有意に低値を示し、好酸球性気道炎症の抑制に全身性ステロイドが効果的であると思われた。次に、喘息患者の好酸球を刺激し、発現している遺伝子をGenechipにて網羅的に解析した。その結果、これらの5つの刺激全ておいて、対照に比べ2倍以上高発現した遺伝子には、Caspase 4, Serine/threonine kinase 17b, Chemokine(C-C motif) ligand 5, Chemokine(C-C motif) receptor 1等が認められ、これらの分子は今後の新たな喘息治療ターゲットの候補になる可能性があると考えられた。
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