研究概要 |
リンパ球脈絡髄膜炎(lymphocytic choriomeningitis virus, LCM)ウイルスは、アレナウイルス科アレナウイルス属に分類されるウイルスで,宿主はマウスなどのげっ歯類である。ヒトが感染すると,無菌性髄膜炎を引き起こすことが知られ,さらに、妊婦がこのウイルスに感染すると胎児に感染が広がり,先天性感染症の原因ともなる。つまり,LCMウイルス感染症は人獸共通感染症のひとつである。また,米国などの海外では、LCMウイルスに感染して死亡した患者から採取された臓器を移植され,臓器移植を受けた患者がLCMウイルス感染症により死亡するという事例が報告されている今年度はLCMウイルスの組換え核蛋白に対する単クローン抗体を作製し,それを用いた抗原検出ELISA法および病理組織中LCMウイルス抗原検出における有用性を検討した。 2頭のマウスにLCMウイルス核蛋白を免疫し,脾臓を採取し,脾臓から得られたB細胞をマウスミエローマ細胞と細胞融合させた。抗LCMウイルス核蛋白を分泌するハイブリドーマをスクリーニングする方法で、最終的に6クローンの抗抗LCMウイルス核蛋白抗体分泌ハイブリドーマ(24-1-E10-42,24-1-E10-71,24-2-E3-30,24-2-E3-31、25-2-E5-25,25-2-E5-27)を樹立した。これらの単クローン抗体は,2M尿素存在下においても,抗原との結合が維持される性質を有し,avidityの高い抗体であることが確認された。ELISA,Westernblot法、蛍光抗体法によっても,LCMウイルス核蛋白と結合した。さらに感染性LCMウイルス感染細胞中の核蛋白と,蛍光抗体法およびWestern blot法で結合することが確認され,病理標本中のLCMウイルスを検出する上で,有用な抗体であることが確認された。本研究により樹立された単クローン抗体を捕捉抗体として,そして,抗LCMウイルス核蛋白ウサギ抗体を検出抗体としたsandwich ELISAにより,LCMウイルス検出ELISAを整備することが可能となった。また,上記の方法に従い,アレナウイルスに分類される南米出血熱の原因となるフニンウイルスの核蛋白に対する単クローン抗体も作製した。
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