研究概要 |
1.自然皮膚炎発症モデルマウスであるIκBζノックアウト(KO)マウスにおける皮膚炎の組織学的および免疫組織学的解析し皮膚炎発症メカニズムについて検討した.ワイルドタイプマウスの正常皮膚とIκBζKOマウスの皮膚炎発症前,発症直後,慢性期の皮膚を採取し,組織学的差違を検討したところ,発症直後のIκBζKOマウスの皮膚では,表皮の変化は軽微で真皮血管周囲にリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤がみられるのみであった.しかし,炎症が慢性化するにつれ,表皮は肥厚し,真皮上層から血管周囲の炎症細胞は,トルイジン・ブルーで染色される肥満細胞を混じるようになり,脱顆粒像も認められた.このことより,IκBζKOマウスの自然発症皮膚炎は,allergicな反応が関与している可能性が示唆された. 2.次に,このIκBζKOマウスの自然発症皮膚炎が,Th(T helper)2細胞を介した経路により発症しているかどうかを解析するために,Th2サイトカインを持たないStat6 KOマウスを用い,IκBζ/Stat6 doubleKOマウスを作成し,IκBζKOマウスとともに組織学的および免疫組織学的に解析した.その結果,IκBζKOマウスの眼瞼,および口囲の皮膚炎部位より採取したサンプルの解析により,IκBζの炎症皮膚では,Th1およびTh2サイトカインに加え,Th17サイトカインの発現もみられた.これは,IκBζ/Stat6 double KOマウスでも,同様であった.また,血清IgE値は,IκBζ-/-,IκBζ-/+およびIκBζ/Stat6 double KOマウスにおいて有意差はみられなかった.これらの結果より,IκBζ KOマウスにおける自然発症皮膚炎の発症に,IgEおよびStat6以外の経路が関与していることが示唆された
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