研究課題
基盤研究(C)
昨年度は非採血型循環機能検査装置を用いて成人生体肝移植症例の周術期での循環動態の変動と肝機能変化・予後を比較検討して、その循環動態は肝移植により第14病日までには正常化することを見出した。本年度は循環動態と周術期腎機能との関係を検討した。(患者と方法)対象は成人生体肝移植20例で、術前・術当日・第1・2・3・7・10・14・21そして28病日に本装置でCI、K値の測定を行なうとともに、腎機能検査は24時間クレアチニンクリアランス値(CCr)、血清クレアチニン値(Cr)、N-acety1-β-D-glucosaminidase(NAG)、血・尿中β2-microglobulin(BMG)、Fractional excretion of sodium(FENa)を測定した。(結果)各因子を術前・第14病日で比較するとCCrは75.9±34.2(ml/min)が46.1±19.6となり腎機能低下を示し、NAGは17.6±12.1が14.0±11.6(正常値:1〜5U/1)で近位尿細管障害は改善せず、また尿中BMGも729.9±2012.5が939.2±1431.3(正常値:<250μg/1)であり尿細管+糸球体障害が存在し、FENaは1.2±1.1(%)が1.0±0.7であり変動を認めず、Crは1.2±1.1が0.7±0.3(正常値:0.5〜1.2mg/d1)と改善が認められた。(結論)肝移植患者の腎機能は循環動態の改善とともにCrが改善するなど一見腎機能の改善が示唆されるが、潜在的腎障害は存在し、脱水・腎毒性薬剤の投与などで容易に腎障害が顕性化してくると考えられた。従って本法は末期肝不全患者の循環動態の評価に関しては周術期管理に極めて有用であると考えられるが、循環動態の改善すなわち腎機能の改善とならないことが示唆され、腎機能を考える場合循環動態変化以外の因子も考慮すべきと考えられた。
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