研究課題
基盤研究(C)
癌細胞は自己複製能と分化能を合わせ持つ幹細胞様の細胞(cancer stem cell=CSC)から発生するという考えが注目されている。癌組織は、増殖性の分化型癌細胞(抗癌剤感受性)と未分化のCSC(抗癌剤抵抗性)との両者で構成されているが、効果的で持続的な治療を行うにはCSCに対する治療法を開発し確立する必要がある。したがって、本研究の主目的はCSCを同定すること、さらにその上でCSCに対する治療法を開発することである。(1)乳癌細胞株においてHoechst 33342色素染色、表面マーカーCD241CD44によりcell sorterを用いてCSC(Side population=SP)分離した。(2)CSCは抗がん剤に耐性であることを確認した。(3)SP細胞とCD44+24-/low細胞との間には強い相関関係があることを見出した。CD44+24-/low細胞比は通常16%程度であるが、SP分画では46%と著明に増加する。(4)Real-time PCRやImmuno-blottingを用いて、CSCにおける形態形成シグナル(Wnt、Notch、Hedgehogなど)は高発現していることを見出した。(5)さらに乳癌における代表的シグナルであるエストロゲン・レセプターとのクロストークが存在することを確認した(Koga K,et al.2008)。(6)当科で開発したHedgehogシグナル系のレセプターPatched1に対する抗体により、効果的にSP分画の細胞やCD44+24-/low細胞の増殖を抑制した。以上より、抗癌剤抵抗性と考えられる乳癌CSCにおいて、形態形成シグナルは重要な役割を果たしており、有力な治療標的となることを明らかにした。
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