研究課題
基盤研究(C)
癌の浸潤・転移過程は分子レベルでの解明が世界レベルで進められているが、その過程は大別して3つの重要な機構が一連の過程の中で効率良く且つ複雑に構成されている。それらは1)癌細胞の遊走・接着、2)細胞外マトリックス分解、3)血管新生であるが、我々は細胞外マトリックス分解と血管新生に深く関わる分子であるヘパラナーゼ(Heparanase: HPA)について、本科学研究費を用いて、研究している。先ず、ペパラナーゼが分化誘導刺激によってシャペロン(HSP90)と結合し核内に移行し細胞に分化を誘導することを明らかにしてAACR,Cancer Scienceにおいて発表した。また、血管新生については昨年度に既に下記論文において、ペパラナーゼがCOX-2を介して血管新生をもたらすことを明らかにした。すなわち、これまでの論文とあわせて胃、大腸、食道、乳腺においてペパラナーゼが発癌、進展過程に強く関わり、COX-2を介して血管新生をもたらすことがin vitroならびにヒトがんにおいて、明らかとなった。以上のことから、我々は癌の浸潤転移過程を系統的に理解する上でHPAとFAKを軸としたシグナル分子生物学的相互作用及びシグナル伝達系の網羅的解析と、これらの分子を標的とした新既治療戦略の確立及び集学的治療の相乗効果の基礎的検討を開始している。こういった研究を通じて分化誘導の仕組み、特異的な分子標的薬剤の開発につながり、将来の臨床への貢献が期待されるものと考えられた。
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